「パソジェネシス（pathogenesis）」「サルトジェネシス（salutogenesis）」という聞きなれないワードを使って価値観の転換を説明します。

　パソジェネシスは『病因論』と訳されます。病気の症状が現れたら受診して診断・治療を受け、回復したらめでたしめでたし......という、これまで多くの人が考えてきた医療モデルを支える概念です。それに対して、サルトジェネシスは『健康生成論』と呼ばれ、そもそも『健康な状態』という基準点を設定せず、元がどんな状態でも、それより良くなればOKという概念です。これは慢性疾患の場合にマッチする考え方です。

　すでに完全に回復する見込みがない場合でも、より幸せな状態をめざすことが大事です。生活の中で自分なりの役割や生きがいを見つけたり、仲間や家族と一緒にいる感覚を味わったりすることは、その人の健康や幸福に寄与します。こうした生き方のサポートをすることもサルトジェネシスな考え方であり、まさに在宅医療や在宅介護が貢献できる部分ではないでしょうか？。これからは「在宅医療や在宅介護でも、自分にとって必要なサービスが提供されればそれでいい」という考え方が主流になっていきます。